肺炎 ~風邪と思い込まないで~

肺炎 ~風邪と思い込まないで~
医療法人関田会 ときわ病院内科 三村文利

 

私たちが呼吸する空気の通り道は気道と呼ばれます。

鼻からのどまでを上気道、気管から気管支までを下気道といいます。

気管支は肺に入ると細かく枝分かれして、最終的には肺胞と呼ばれる小さな袋に至ります。

肺はたくさんの肺胞が集まったブドウの房状の構造になっています。

呼吸器とは鼻から肺までの呼吸を司る器官のことです。

呼吸器には空気と一緒にウイルスや細菌などの病原体が入ってくると、それらを様々な仕組みで排除し、身体を守る機能が備わっています。

鼻毛や鼻粘膜、のどの粘膜で大きな粒子をとらえ、そこで捕えられなかった小さな粒子が気管に入ると、咳をして勢いよく外へ出します。

それでも残ったものは気管支に生えている線毛という細かい毛がこれを捕えて、外に追い出します。

また人間の体には免疫によって病原体を排除する力が備わっています。

咳や熱が出ている場合はこの免疫が働いて病原体と闘っているときです。

免疫の働きによってたいていは気道の軽い炎症程度で治ってしまいます。

しかし気道の炎症がひどくなって呼吸器の防御機能を上回った場合や病気やストレスのために免疫力が落ちている場合は病原体が上気道から下気道、肺にまで入り込んで、感染し、肺炎になってしまいます。

肺炎の病原体としては細菌が最も多く、中でも肺炎球菌が最多です。

次いでインフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などです。高齢者や寝たきりの方には食物を誤嚥したり、唾液を飲み込んだりして起こる肺炎があり、口腔内の常在菌が原因となる場合があります。

誤嚥性肺炎と呼ばれ、社会の高齢化に伴って急速に増加しています。

若年に多いのはマイコプラズマ、クラミジアなどの病原体で、非定型肺炎と呼ばれます。

マイコプラズマ肺炎は非常に咳が激しいのが特徴で、今年も大流行しています。

その他、頻度は低いですが、ウイルスが原因となるウイルス性肺炎もあります。

風邪は上気道に主にウイルスが感染しておこり、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳などの局所症状(カタル症状)と発熱、倦怠感、頭痛などの全身症状が出現した状態です。

抗菌薬の投与は必要なく、症状に合わせた薬を服用して安静にしていれば4、5日で自然と良くなります。肺炎になると咳、黄色などの色のついた痰、胸痛、呼吸困難などの症状が生じます。

高齢者では免疫力が低下していて、発熱や呼吸器症状がなく、単に元気がない、食欲がないなどの症状だけのこともありますので、注意が必要です。

肺炎は問診、聴診器による診察、胸部レントゲン写真、血液検査、喀痰検査などで診断します。

レントゲン写真で分かりにくい場合は胸部CTを行うこともあります。原因となる病原体によって抗菌薬の種類が異なります。

軽症なら経口の抗菌薬で通院で治療できますが、重症なら点滴治療や酸素吸入などが必要で、入院治療になります。

肺炎は風邪やインフルエンザの後、免疫力が低下している場合に感染しやすいので、まずは風邪を引かないようにしましょう。

外出したら、うがいと手洗いを心掛けましょう。過労を避け、バランスのよい食事、適度の運動を心掛けて免疫力を高めましょう。

室内の気温は20~25度、湿度は60~80%に調整しましょう。インフルエンザワクチンの接種もとても有用です。

また高齢者や慢性閉塞性肺疾患を有する患者さんには肺炎球菌ワクチンの接種をお勧めします。

誤嚥しやすい方はできるだけ寝たきりの状態を避け、歯磨きやヨードでのうがいをこまめに行い、口腔内を清潔に保ちましょう。

2011年には肺炎は脳卒中を抜き、がん、心臓疾患に次いで死因の第3位になりました。

肺炎は治療が早ければ早いほど、回復も早くなりますので、肺炎が疑われるときは早めに医療機関を受診しましょう。